11.ドラマ
ドラマドラマ♪まだまだあるで〜〜♪
  1. Machine Messiahマシーン・メシア
  2. White Car白い車
  3. Does It Really Happen? 夢の出来事
  4. Into the Lensレンズの中へ
  5. Run Through the Light光を超えて
  6. Tempus Fugit/光陰矢の如し
Trevor Horn: Vocals & bass on 5
Chris Squire: Bass, vocals, and piano on 5
Geoff Downes: Keyboards
Alan White: Drums
Steve Howe: Guitars
Jun Green

 

Jun Greenのドラマ 1

『ドラマ概論』

 「Drama」の曲の個人的見解を述べてみたいが、これはそのままYesマンとしてのトレバーホーン・ジェフダウンズへの賛美として受け止められれば幸いである。なによりも「Yesメンバーズカード」の持ち主の中で「最もレコード販売枚数の多い元Yesマン」のキャリアのスタートがこの「Drama」であることは誰もが認める事実である。「大衆の支持を得る事が出来る才人」があえて「憧れのマニア」の世界に飛び込んだ悲劇を考えてみたい。そして、たった一つの作品での批判にもかかわらず、80年代のYesに深く関わった事実を受け止めるべきである。

 さて、「Drama」時代のYesに関して幾つかの興味深い音源を、後年手に入れることにより、当時は見えなかったトレバー&ジェフの活躍や楽曲の完成の過程がよく理解できるようになった。

 まずは6/9/1980のMSG(マイケルシェンカーでなくて、NYのコンサート会場です)のライブブートCD、「Drama」からはもとより当時の未発表曲の「Go to This」「We canfly from here」(両曲ともBugglesの2nd用の曲スティーブハウが暴走気味になる・・たぶんそれでレコード選曲から落ちたのかなぁ・・)や、ジェフダウンズのソロコーナーとして「Videokill・・」と「Man in the Car」が「フェアライト」のシーケンスをバックに「ボコーダー」を乱用しまくって演っています(まぁリックウェイクマンのヘンリー8世みたいなもんですね・・・)。「And You And I」「Starship Trooper」なんかも演っていますが、「スタジオ」とちがって「ライブ」では「声質」がかなりコンロールしにくいためか「もろトレバーホーンの声」になってしまいますが「ジョンアンダーソンに敬意を込めた歌い回し」はトレバーホーンがYesファンだったことの表われでしょう。このライブはケーブルTVで収録されたとの噂もあり是非発掘して欲しいもんです。

 そして当然Bugglesの2nd「Adventure in ・・・」、タイトルからしてずばりトレバーホーンISMが溢れています。特に「Into the Lens」の元ネタが披露されたり、タイトル曲でクリススクワイアがサウンドエフェクトとしてクレジットされ、その曲のBassギターの音質(これってもしかしてクリススクワイアが「Tempus fught」で使用したフランジング搭載のBassギターと同じじゃないだろーね)やフレーズ(これが全然トレバーホーンらしくないBassラインだったりする)が笑えるほどYesしていたりするのです。そして後の90125Yes に使用される「オーケストラ・ヒット」の原形のサウンドが随所に見え隠れしています。
 取り敢えず「最小最低限の機材でも、それをコントロールする技量によって音楽は素晴しくなる」の見本みたいなレコード(当時は)でした。この機材はほとんど「日本製品」であった為か、やたら日本の歌謡曲の中でも「おまえもパクッたんかー」の状態だったのを覚えています。そしてトドメの一手になるのがブートの「Yes on Digital Reels」の後半の曲。クリススクワイア・スティーブハウ・アランホワイトのパリ?アトランタ・レコーディング・トリオ時代のデモが収録されているのにびっくりしてしまった。「Tempus fught」「Runthrough the Light」「Does it Really Happen?」が「ギター・ベースブイブイ状態」なのである。とりあえずすごいスティーブハウの気合いが感じられるデモである。

「Machine Messiah」
 たぶん5人揃ってのセッションの最中にジェフダウンズとスティーブハウのフレーズ持ちよりにできたものと思われる(「Yes on Digital Reels」にはこの曲のネタになるものが何も存在していなかった)。が、もしかしてBugglesの二人が大ファンのYesのスタジオを表敬訪問する時に持参した「2曲」のひとつか・・・(もうひとつは言わずもがな)。スティーブハウのリフを支えるジェフダウンズのポリシンセ軍団・・・これは新生YesではなくAsia~GTRに続く一連の80年代の流れの原形をこの曲に感じることができる。もし時代背景が良ければより「大作」になっていた可能性がある曲だけに、つくつづく「悪い時代」に発表されたものだと思う・・・タイトルからして・・・。

「Man in the Car」
 名器フェアライトのシーケンス・サウンドが初めてYESで聴けた曲。フェアライトのサンプリング機能は「Drama」レコーディング当時未完成で「Drama」ツアー終了後にバージョンアップされ、Buggles2nd、ABCやFGTH、GTTレーベルでの作品にシーケンス兼サンプリングマシンとして使用され、後に「90125」の「オケヒット」でサンプリングマシンとしての頂点を極めることになる。が、意外にも「サンプリング」としてこの名器フェアライトを使いこなしたのはトレバーホーンの方で、ジェフダウンズは「シーケンス付MIDI音源」としAsia、GTR等でそのサウンドの頂点を極める。
 これは「うまく弾けないからアイデアで勝負するトレバーホーン」と「うまく弾けるから音源として使うジェフダウンズ」という二人の違いが露骨に感じられる。なおフェアライトのサウンドが日本で最初に使われたのは「うる星やつら」のサントラだったという事実は意外と知られていない。ちなみにブラッフォードが、シモンズ(あの六角エレドラ)のデモライブで来日した時、バックのサウンドはほとんどフェアライトだったが意外とイマイチだった記憶がある。

「Does it Really Happen?」
 「Yes on Digital Reels」収録時にくらべキーボードのサウンド増えたのが当然の違いであるが、ジェフダウンズはリックウェイクマンに比べ「ちょっとエスニックな擦弦系音色」が好きなようである。「Drama」全体を通じての「クラシック臭さ」が薄い理由はキーボードの演奏方法よりも「音色」によるものが結構大きいものである。例えば「リレイヤー」が結構「70年代フュージョン臭い」のも、チックコリア等によって完成した「ショワショワ・フェンダーローズ+ミョンミョン・ミニムーグ]のパターンをパトリックモラッツがもろにやったせいがある。リックウェイクマンがピアニストの自分をシンセでも自己主張するのに対して(はっきり言って音色には無関心、フレーズが命のプレイヤー指向)、ジェフダウンズは根っからのシンセスト(少ない音数でも音色で勝負、プロデューサー指向)であることを「Drama」の中で披露した(意外だがキーボードパートの中でのピアノプレイの比率は、Buggles1stの方が多い)。ここまで書いて気がついた・・・楽器・時代・バンド・どれだけ変わってもサウンドの変わらないトニーケイという存在を?うーん、説明不可。しかしラストのインストパートなどの展開は「Starship Trooper」に酷似しており「古き良きYesサウンド」を彷彿させる部分がある。

「Into the Lens」
 Bugglesの二人の「ネタ」を「Yesの5人」で料理したのがBuggles2ndのおかげでよくわかった・・・が、後半のタイトなリズムのキメはさすがYesとしか言えない。テクノっぽい曲でもYesにかかると「Yesらしく」なる好例かも(それもジョンアンダーソン抜きでも 逆説だが「もろトレバーラビン」のLove will find awayをジョンアンダーソン抜きで演ったらYesらしさはあるだろうか・・・???)。特にスティーブハウが「エレクトリック・シタール」でリズムを絡めるところのサウンドは「危機」当時で良く見られた技法である。

「Run through the Light」
 これはYes の歴史上に残る曲であると思う。それはクリススクワイアが自らのプレイパートをトレバーホーンに譲ったという事実。それも本来クリススクワイアが作った曲(「Yes on Digital Reels」でほとんど完成していた)においてである。これだけでも当時どれだけの信頼をトレバーホーンが得ていたかよく解る。また、それに答えるようにトレバーホーンは「クリススクワイアの様なリードラインを弾かない地味なプレイ」をしているのが好感をもてる。が、ピック弾きに対抗するかのごとくの指弾きはトレバーホーンの意地かも・・・。ただVoの歌いだしが、意図的にジョンアンダーソンに似せようとしているのかどうか・・・、もしジョンアンダーソンだったらと思うこともあるVoラインが印象的である。しかし、このアルバムにジョンアンダーソン臭さがない理由として「ジョンの歌のバックでジョンの弾くアコースティックギターのカッテイング」が一つも無いというのも面白い。そういう意味ならジョンアンダーソン「サウンド」ファンが支持しない理由になると思う・・・が、そういうファンに限って、結構ジョンアンダーソンのソロアルバムの曲を歌えなかったりするもんだ・・・ナハハ、ごめなさいジョンファン!!。

「Tempus fught」
 私は今でもBassを弾く前の「指馴らし」にこの曲を弾くようにしている(ちなみにクリススクワイアは「リレイヤー」らしい・・・)。などと言うことは別にしてかっこいい曲である。もし間違えてAsiaのアルバムに入っていたら?などと思うこともあるがカールパーマーの「お祭りスタイル」ではどーにもならなかっただろう。が、「スティーブハウのリフにジェフダウンズが味付けをするとこうなる」の好例である(「Yes on Digital Reels」の原曲よりテンションが加わった)。
 しかし、この歌詞の一節「・・・answers to YES」が繰り返される部分なんかは「外部からみた内部が忘れているYes」を象徴しているようにも見える。Yesから別れてもArt of Noiseで「Close to the Edit」などと言う「愛情表現」をするトレバーホーンの作詞じゃないかな?などと思ってしまう一節である。

 そんなこんなの「Drama」発売以来まもなく20年になる「愛聴盤解説」。事実は知らないけど「夢」をもって「音」に接することができた時代・・・「レンタルでちょっと借りて・・・」なんぞがままならず「今月のバイト代でこのレコード!!!!」という時代の思い出と共に・・・CDではなく「針をのせる瞬間のトキメキ(プリプリの歌詞じゃ)」を今でも・・・見開きのジャケットと共に・・・。

(Jun Green)

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DATE(2001/6/9)