6.イエスソングス

1973

  1. Opening Excerpt From "Firebird Suite"
    /オープニング〜ストラヴィンスキー:「火の鳥」から抜粋
  2. Siberian Khatru/シベリアン・カートゥル
  3. Heart Of The Sunrise/燃える朝やけ
  4. Perpetual Change/パーペチュアル・チェンジ
  5. And You And I/同志
  6. Mood For A Day/ムード・フォー・ア・ディ
  7. Excerpts From "The Six Wives Of Henry VIII"/ヘンリー8世と6人の妻から抜粋
  8. Roundabout/ラウンドアバウト
  9. I've Seen All Good People/光の中〜オール・グッド・ピープル
  10. Long Distance Runaround/The Fish/ 遥かなる想い出/ザ・フィッシュ
  11. Close To The Edge/危機
  12. Yours Is No Disgrace/ユアズ・イズ・ノー・ディスグレイス
  13. Starship Trooper/スターシップ・トゥルーパー
Jon Anderson: Vocals
Chris Squire: Bass and vocals
Rick Wakeman: Keyboards
Bill Bruford: Drums on 4 and 10
Alan White: Drums on everything else
Steve Howe: Guitars and vocals
エンブリオ
【y_shin】
     
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エンブリオのイエスソングス

「イエス・ソングスを生で観た」

 アルバム「イエスソングス」は、1972年に行われたライブ演奏を収録したもので、そのほとんどはドラムスがビル・ブラフォードからアラン・ホワイトに交替した時期(72年8月以降)のものだ。
 発売は73年5月。LP3枚組のボリュームからも判る通り、当時のコンサートを丸ごと聴けるファンならよだれものの内容である。しかも、脱退したビル・ブラフォードのドラム・ソロが聴ける「バーペチュアル・チェンジ」、アルバム「こわれもの」の中でも人気の高かった「遥かなる思い出/ザ・フィッシュ」も収められている。
 アルバムのジャケットデザインが注目され始めたのはこの時期からだったと、思う。ピンク・フロイドの『狂気』が発売されたのがこの年(73年3月)で、フロイド=ヒプノシス、イエス=ロジャー・ディーンとの認識が固まり、新譜も音と同時にアルバム・ジャケットに少しずつ関心が高まってきた。『こわれもの』『危機』の成功で、1973年にはイエスはロック・シーンのメイン・ストリートを肩で風を切るぐらいの勢いがあった。
 その「イエスソングス」が発売される少し前に、日本へ絶好のタイミングで来日して、東京、名古屋、大阪、京都と演奏旅行して廻った。

 1973年3月8日の新宿厚生年金会館(初日)を観ることが出来たので、当時を思い出しながらレポートしたいと思います。

 会場へ入ると、「危機」のイントロ部分、小川のせせらぎと小鳥のさえずりが聞こえてくる。(翌日の渋谷公会堂公演では、琴、尺八を使った純邦楽に変わった)座席(右寄りの5列目)へ着くと、目の前にはコの字型に多数のキーボード群があり、ステージ中央を見ると、見られない装置、楽器でステージが埋め尽くされていた。ハウ側の方へチケットが取れなかったは残念。

 開演時間を10分が過ぎた頃に照明が落ち、クラシック(火の鳥)が流れてくる。SPから出る音量がピークに達した時、スポットライトがウエイクマンへあたり、「シベリアン・カートル」が始まった。ドラム、ギター、ベースの音量に負けていないアンダーソンのボーカル、終曲部でのハウのサンタナばりの速弾き、レコードでは最後フェイドアウトしてしまうが、全員のシャウトで終わる完璧な演奏にただただ圧倒されるばかりだった。
 そして、音響機材や照明システムは、前年(1972年)のピンク・フロイドの来日公演に見た時よりも上回っていた。照明が本当にきれいだ。メンバーを照らすというよりも、目まぐるしく変わるサウンドに表情をつけるといった感じ。ステージがぐっと盛り上がる。
 ハウのマンドリン、アンダーソン、スクワイアのハーモニーが美しい牧歌的な「心の光」。そして突如、ステージ中央に踊り出たウエイクマンが頭上で大きく手拍子をうち始まる軽快な曲「オール・グット・ピープル」へと続いていく。
 「次の曲はアルバム『フライジャル』からです」と、アンダーソンのMC。ウグイスの鳴き声を細かいサンドペーパーで丹念に磨き上げたようなベルベットボイスのアンダーソンがその真価を発揮する「燃える朝やけ」。僕の一番好きな曲だ。
 そして、ハウのアコースティック・ギター・ソロ、「ムード・フォー・ア・デイ」「ザ・クラップ」はフラメンコあり、ジャズ・ギター風ありで、肩の力を抜いて聴けるはずだが、どうも緊張してしまう。音を聞き漏らすまい、と必死だからか。
 次の曲へ行く前にチューニング。アンダーソンが「おはよう」と観客の笑いを誘い、煙草を吸う奴を見つけたのか「ノー・スモーキング」と一喝して、喝采を浴びる。
 あまり印象が薄い「同志」。そして、コンサートもいよいよ佳境へ入っていく。
 すでに過去の演出方法だが、ミラーポールが天井から降りてくる。もう観客はワーワー盛り上がる。「危機」の始まりだ。途中スモークがたかれる。あっという間に20分が過ぎまたミラーボールが降りてきてSEもフェイドアウトしていく。拍手が鳴りやまない。
 次はウエイクマンが、ソロ・アルバムから断片的に繋ぎ合わせたソロ演奏。メロトロンの男性コーラスのハレルヤが耳に心地よい。途中ホワイトのドラムも加わり、ロック調になる。サイレンの音と共に「ラウンドアバウト」へ繋がる。ここの所が美しいだよね。
 アンコール曲は初めて聴く「ユアズ・イズ・ノー・ディスグレイス」。もうハウの鬼気迫るギターを楽しむ余裕もない。ただただ、音に引き込まれてしまう。
 「スターシップ・トゥルーパー」はまた男性コーラスが印象に残る曲で、メロトロン独特の出だしの音がフワッと遅れ気味の所が好きです。最後はSEの音を残しながら、メンバーはステージを降りていった。

 見終わった時はドッと疲れが出た。『こわれもの』と『危機』しか所持しておらず、アルバムと同様な繊細な音を期待していたが、全体的にハードでホットな印象を受けた。SPの前だったので、ドラムの音がやけに大きく、音数も多くうるさく感じた。たらねば、は禁句だが、ビル・ブラフォードだったら…。当時は来日公演でのイエスを評価する際、必ず出てくるのが、レコード通りの演奏をライブで完璧に再現するスーパーグループ、というのがある。それはイエスのメンバーの演奏技術だけでなく、PAのミキサー、ライティング・スタッフの貢献も大きい。この素晴らしいライブに立ち会うことが出来て本当にうれしい。それが今でもこうしてプログレを引きずっていけるのはもっとうれしい。

73年3月8日 新宿厚生年金会館 曲目リスト
1. Opening〜Firebird
2. Your Move/All Good People
3. Heart Of Sunrise
4. Mood For A Day
5. The Clap
6. And You And I
7. Close To The Edge
8. Rick Wakeman Solo
9. Roundabout
アンコール
10. Yours Is No Disgrace
11. Starship Trooper

(エンブリオ)

DATE(2001/6/11)

 

y_shin】のイエスソングス

『イエスのベストアルバム』

イエスソングスである。72年の危機発表後(ブラッフォード在籍中のこわれものツアー含む)のツアーライブである。

「Yessongs」

 まさに「イエスの歌」と題されたアルバムである。また、70年代のライブアルバムとしても秀逸な位置にあるアルバムであり、当時、LPのライブが2枚組が多い中、130分というコンサートをほぼ収録した3枚組で発売されたのである。
 アルバムとしては既に色んなところで語り尽くされている。かくいう私70年代のロック小僧時代、そして再突入の前兆をこのアルバムに見たし、実際の再突入後もこれをネタにHPのコンテンツとした。
 その時の感想文(レビューではない)があるので細かい楽曲をまた書こうとは思わない。
 しいていえば、たとえテープを多用しようともスタジオアルバムの複雑な構成の再現、更にオリジナルをしのぐライブならではの音の迫力、メンバーの自己主張を堪能できる事であろう。 
 既に30年近い時を経ても新鮮に聴け、かつなじみの曲が聴けるところが冒頭に挙げた「ベストアルバム」とする所以である。そして、この時期、このアルバムにある曲はその後のツアーに於いて、延々と演奏され続けていったのである。たとえ、メンバーが替わろうとも。。

 以下にイエスソングスに収録された曲(ソロは覗く)を以降のツアーでセットリストに入っていた物をあげてみた。

  その後のツアー   
イエスソングス収録曲   海洋地形学 リレイヤー ソロ 究極 トーマト ドラマ 90125 ビッグジェネレーター ABWH ユニオン トーク キーズ オープンユアアイズ ラダー マスターワーク  
"Firebird Suite"(参考です)                  
↑オープニングです                                
Siberian Khatru                 7.5%
Heart Of The Sunrise         ○    10.8%
Perpetual Change                       4.3%
And You And I   ○    14.0%
Roundabout ○  16.1%
I've Seen All Good People       ○  12.9%
Long Distance Runaround/The Fish                     5.4%
Close To The Edge               8.6%
Yours Is No Disgrace       ○          8.6%
Starship Trooper         11.9%
                                 
イエスソングスからの採用  6曲 6曲 4曲 6曲 8曲 4曲 6曲 5曲 7曲  6曲 5曲 6曲 9曲 10曲 5曲  
曲の拾い出しは手元のブート、ネットから拾っているが漏れがあった場合はご勘弁を(^^

 さすがに、ドラマ・ツアーでは4曲と減ってはいたが、実に収録された曲の半数以上が各ツアーのセットリストに入っている。97,98年のオープン・ユア・アイズ・ツアー、ラダー・ツアーなどでは「これでもか!」と演奏されている。98年来日では「危機」に涙し、「同志」に神の降臨をみたとういう方もいたことであろう。
 お約束の「ラウンドアバウト」、そして「同志」、以外に演り続けられていた「オール・グッド・ピープル」そして、これでお別れである「スターシップ・トゥルーパー」これぞイエスと言わんばかりの「燃える朝焼け」。。近年のライブでは勢いこそ落ちたが円熟された「危機」、90125時代にはラビンのロックアレンジされた「ユアズ・イズ・ノー・ディスグレイス」
 イエス30数年の歴史から見ても代表曲が満載されたアルバムであったことがみられるであろう。

 イエスのベストなアルバムと言われた場合、ライブアルバムであってもこれぞベストアルバムと進めることのできる1枚である(3枚?)。

 ただし、LP時代の収録時間割のせいか、「ラウンドアバウト」が早い時間で聴かされてしまうのが難点か?(あとは「クラップ」が入っていないぞ!(笑))

(2001/5/30 y_shin)

DATE(2001/5/30)

 

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