10.トーマト

1978

  1. Future Times/Rejoice/輝く明日〜歓喜
  2. Don't Kill The Whale/クジラに愛を
  3. Madrigal/マドリガル
  4. Release, Release/ 自由の解放
  5. Arriving UFOUFOの到来
  6. Circus of Heaven/ 天国のサーカス
  7. Onward/オンワード
  8. On The Silent Wings of Freedom/ 自由の翼
Jon Anderson: Vocals
Chris Squire: Bass and vocals
Rick Wakeman: Keyboards
Alan White: Drums
Steve Howe: Guitars
魚屋
 
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紫のトーマト

『TORMATO』 (1978年)

つぶれて飛び散ったトマト、分裂寸前のYES。
それとは裏腹に、実にYESらしいポップ・ソング集かな。

 ヒプノシスの手による、ジャケット2作目。迷作ジャケと思った。なにも、本当にトマトをつぶさなくてもなぁ。(メンバーの意図するものと違うのですけど)
 それでも、私にとってはYESを聴き始めて初めて発売日を待って買ったアルバムなので、思い出深い1枚なのです。
 音的には、前作『究極』の延長線上かな。短い曲が増え、プログレ色が薄くなった。でも、以前にも増して張りのある、ジョン・アンダーソンのハイトーンボイスは、健在。ポップになっても、YESらしさは失ってはいない。
 一度離れ改心して戻ってきたリック・ウェイクマンが、張りきり過ぎの感のある『究極』より落ち着いてきて、楽しそうにやっていてなんか微笑ましい。相変わらず、きらびやかな鍵盤の音だ。

 観念的な感じはなく明るく楽しい楽曲ばかりで、素直に楽しめます。ライブ映えしそうな曲ばかり。
 例え「これは、プログレじゃ〜ない」と否定していても、YESのルーツの1つは、Beatlesや、60年代アメリカのポップ・ソングなどである事をふまえると、こういう展開も納得でき、実によく聴きました。
 聴いているうちに、その音のカラミなど、結構こだわっていることが解ってきました。だけど、イマイチまとまりに欠ける出来という感じは否めません。
 当時の音楽雑誌は、なかなか厳しい事を書いていたような気がしますが、私はそれでもYESの肯定的な面が具体化されたと解釈し、一応支持していました。
 その頃流行ってたパンクやレゲエの影響をもろにかぶらず、実にYES以外の何ものでもないと・・・。

 その後のツアーのあと驚くべきできごとが・・・。

 今思うとその後の進路は、裏ジャケのメンバー写真が物語っていますね。ジョンとリックが同じ方向を向き、クリスはあらぬ方向を向いている。スティーヴ・ハウと、アラン・ホワイトは我関せずという感じで正面向いている。心なしか音的にも、それが現れているような気がします。
 もう、その頃からかメンバーの気持ちが離れつつあったのは。どうしてなの?と錯乱の扉・・・(アルバム違うけど)
 それ以後、私もますます過去にさかのぼる事に拍車がかかってしまったのです。 私にとってのYESの最大の特徴は、オリジナルメンバーであるジョン・アンダーソンとクリス・スクワイアの絡みの醍醐味にあると、思っていたので。

*レヴューというか、やっぱり感想文と想い出話に終始してしまったので、曲目についての・・ あ、やっぱり、感想文。

1.    Future Times/Rejoice (6:45 ) 
   “輝く明日/歓喜”

期待させるようなタイトルなんだけど、各メンバーの主張の張り合い、もう 惰性ともいえなくもないような。
リズムは、ドコドコしていて、ハウのギターが これでもかと絡むという具合。クリスが、意外と消極的。ジョンが朗々と歌い上げ、ここぞとばかりに、リックの鍵盤がきらめく・・・。でも“歓喜”はいいね。

2.    Don't Kill The Whale (4:56)
   “クジラに愛を”

YESにしては、珍しいというか、初めてとも言えるメッセージソング。
メロディーもリズムも明解な、実に覚えやすいシングル向けな曲。
“くじらを殺すな”が、“愛”になる邦題おきまりのパターン。ですが、 ホントに、心憎い位のいい曲と思います。ポリムーグによる、クジラの泣き声のような音が、いい感じに郷愁を誘っています・・・これは、リックの粋なはからい。
クジラが海で、波しぶきをあげている映像を背景に、裏ジャケの格好をしたメンバーが 演奏しているというように合成した、いかにも!なビデオ・クリップがありました。

3.   Madrigal (2:23)
  “マドリガル”

リックの中世趣味の現れた、ハープシコード中心の曲。それにジョンの声がよく合っている。
曲中に絡んでくるハウのクラシックギターも、いい感じです。
クリスとアランはコーラスでの参加だったと思います。
この曲にもビデオ・クリップがあって、中世の楽士(貴族?)の衣装のリックが 中世のお城の広間で、まず、うやうやしく御辞儀をしてから、ハープシコードを弾き始めるといった仰々しいものでしたが、それが結構笑いをとっていましたね。
ところで、イントロ部分、ドリカムの曲でそっくりなものがありました。

4.   Release, Release (5:47)
  “自由の解放 ”

調子のよい、アルバムのなかでは一番ロックン・ロールで、元気な曲。
サッカーの試合中の歓声が効果的で、盛り上げに一役買っている。

5.   Arriving UFO (6:03)
  “UFOの到来”

ジョンのSF的趣味な曲。いかにもUFOといったテクノっぽい音が、安直な気もするが、爆発しても、さらにピコピコポヨポヨと続くところがダメ押し。

6.   Circus of Heaven (4:30)
  “天国のサーカス”

ジョンのまさにお伽話の世界。子供に語って聞かせるような・・・可愛い曲。
途中、ジョンのまだ幼い息子(多分)の話し声を入れ、親バカぶりを発揮。
ライヴでも同様にやってた気がします。
しっとりとした、佳曲。

7.   Onward (4:02)
  “オンワード”

クリスの曲。といっても、あまり主張してないベース。
地味めだが、これもしっとり、ストリングス入り。映画の1シーンといっても おかしくない雰囲気の曲。

8.   On The Silent Wings of Freedom (7:47)
  “自由の翼”

この曲がこの中では一番、昔のYESっぽくプログレているかな、長いし。
クリスもジョンもまだ、諦めてない。他のメンバーだって負けてはいないけど 不思議と整合感も感じられる。この曲がトリで引き締まってます。
一番ライヴで聴きたかった曲ですね。

なんだかんだと、まとまりなくグダグダと書き連ねてしまって、すみません。
以前の恋人(!)を思い出しつつ書いたので、相当私情が入っています。
まだ、愛しています。だから、失礼な表現は許してね。

(紫)

DATE(2001/6/15)

 

魚屋のトーマト


 このアルバムが発売された’70後半というと、私にとってはYesこそがフェイバリットグループでありました。 ただリアルタイムで好きだったというより、Yes自体を後追いで聴き始めたことからやはり’71〜5年頃のYesが好きだったというのが正直なところです。
 そんな時に初めて発売と同時に買いに走った(出る日を「待ちに待った」って感じでした)アルバムがのがこの”Tormato”。ファンの間ではもっとも評価が低いこのアルバムが私にとっての初めてのリアルタイム発売だったというのもなにかの巡り合わせだったのでしょうか。
 それでもやはり当時は嬉しくて一生懸命結構聞き込んだもので、もう20数年の月日が経つというのに未だに曲名を見ただけで脳内再生が出来たりします。

 先にこのアルバムは「ファンに不評だ」と書きましたが、まずはその題名とジャケット、「イギリスの地名とトマトを掛け合わせた、そしてそれをイメージしたジャケだ。」との説明を聞いたことがありますが、早い話まるっきりオヤジギャグ。。この辺のセンスってのが世の中パンク一色だった時勢と見事にずれていたんですね

 次にファーストシングルの題名「クジラに愛を」
 これまた若者がパンクムーブメントでで殺気だっている中、のんきに動物愛護を、しかもとても親しみやすいメロディーでJonの少年っぽい歌声をもって聴かされるのですから受けるわけがありません。

 特にクジラを食する日本人にとっては「あんたら何いうてんのん?」てな感じで、気にも留めてもらえない始末。(といいつつ私はこのシングル買いましたけどね。)
 せっかく前回のアルバムから「不思議なお話を」という比較的ヒットしたシングルを出したあとというのに、この戦略は見事につまづいてしまったようです。

 そんなこんなであまり評価が芳しくないこのアルバムですが、演奏者達はとてもリラックスし楽しんでアルバムを作ったんでしょうね。 こういう明るさはこれまでのYesにはあまり無かったので、今となってもとても印象深いのかも知れません。結果的にこれが無ければ後の”90125”の成功も無かったのではないか、そんな気がするのです。


 では少し曲をなぞってみましょう。


1.はChrisのベースが印象的な佳曲、Alanのドラムも力強く曲を引っ張ります。
 Jonの歌と張り合うようにSteveのギターが歌い、バックから優しくRickがサポートする。うーん、いいじゃありませんか。
 曲はRickの旋律に誘われて2.につながります。 ここでも伸びやかなJonの歌声が聴く者を楽しませてくれます。

3.そして先に話した問題の「クジラ」です。
 理想主義者のJonならではの曲でしょうね。
 曲自体悪くないんですが、Steveのギターがなんかぎこちないんですよ。ちょっと気合い入れすぎて空回りって感じかな。
 ちなみにシングル裏面は「アビリーン」でしたが、これまたぎこちない変な曲でした。

4.はリズム無しのRickが先導する小品。

5.は自称”Yes”のパンク(笑)。
 確かに多少そういう匂いが感じられますが、根本的に精神が違いますよね。
 Yesがロックンロールするっていうのはめずらしいですが、やっぱりあんまり似合わないです。

アナログ時は6.からB面でした

6.Steveのギターがエフェクタを使って宇宙人の物まね(?)をするあたりが最大の聞き所かな。

7.はこれも小品ですが、Jonの子供さんが語りで参加しています。
 これがかわいい声!今は何をしているんでしょうね。

8.も静かな調べの中Jonが悠々と歌い上げる曲です。
 この曲は好きです。
”Anderson節”の魅力いっぱいです。

9.ラストはこのアルバムで一番プログレしている曲ですね。
 Alanのバスがかっこいい。私はAlanを滅多に褒めないBill信者でありますが、この曲のAllanの仕事は凄いかっこいいです。曲も疾走感に溢れ、文句無し。



 とラストでせっかく褒めたところなのに、彼らはこの後バラバラ状態になってしまいます。サウンドの要であるJonが抜けたことは私など当時のファンにとって、グループ解散に等しいショッキングな出来事でした。
 Rickに関しては「またかいな。」ですませられたのですが。。

 ここまで書いた私ですが、実はこのアルバム、すでに20年以上は聴いた記憶がありません(ひどい話しですね)。当然CDも持っていません。所持は未だアナログのみです。
 今回も脳内再生のみで急遽レビューしたのですが、これがあなた、始めてみるとどの曲も驚くほど鮮明に聞こえてくるんですよ。
 でもまあ、これを機会に紙ジャケ買うってのもいいかもね。

これ読んでいる若い方、今を大切にして下さいね。
歳行くとぜったいこんな風に耳に残らないんだから。

(魚屋)

DATE(2001/6/14)

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